アラビアンナイトの王子様 〜冷酷上司の千夜一夜物語〜
「いや、本当に関係ないし」
「でも、今、此処で待ち合わせてた相手は専務だろ」

 訊くまいかと思った。
 認めることになるから。

 だが、今後のためにも気になり、
「……なんでわかったの?」
と訊いてしまった。

「素直だな」
と亮太は椅子にふんぞり返ったあとで、

「俺は後ろに目があるんだ」
と言いながら、勝手に、那智のアイスティーを飲む。

 あっ、こらっ、と取り返そうとしたときには、半分飲まれていた。

「ともかく、専務はやめとけ。
 お前、泣くことになるぞ」

 やけにきっぱりとした口調に、つい、
「なんでよ」
とまた言ってしまう。

「あの人、梨花さんを好きなようには見えないのに、結婚しようとしてるからだ。
 なんだかわからないが、強い意志があるんだろ」

 意外なその答えに、
「……わかってる」
と呟く。

 那智はおのれの手を見た。

「でも、別に本当に好きとかじゃないから。
 っていうか、そうやってあおって、その気にさせないでくれる~っ?」

「あおってその気になるくらいなら、好きなんじゃねえの?
 ところで、あれはなんだ?」

 下を通っていた淡い色の髪の、可愛い顔をした男子高校生がこちらに向かい、手を振っている。

 満面の笑みを浮かべて。
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