アラビアンナイトの王子様 〜冷酷上司の千夜一夜物語〜
 遥人はまだ足を止め、亮太と居る那智を見ている。

 行って行って行って~っ。

 もうっ、と思ったとき、亮太が振り返った。

「……専務」

 遥人はたまたまそこに行き会わせたような顔をした。

 那智はぺこりと他人行儀に頭を下げる。

 亮太も釣られたように、頭を下げた。

 よかった、と通り過ぎた遥人を見送り思っていると、勝手に前に座った亮太は、テーブルの上で、肘を前に突き出すと、身を乗り出して言った。

「お前、不倫は駄目だぞ」
「えっ」

 ああ、まだ結婚してないのか、と呟いたあとで、
「でも、専務はやめとけ」
と言う。

「なんでよ。

 あ、いや。
 なんで、やめとけなのよ。

 まあ、専務関係ないけど」
と言ってみたのだが、

「……バレバレじゃねえか」
と言われてしまう。

 最初に言った、なんでよ、の語気が強過ぎたらしい。
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