俺だけ見てれば、いーんだよ。




「那菜、なーな!」

目の前で手をひらひらと振る泉の声に、我に返る。


「どうして何も言ってくれなかったのよぅ」

「まあ、秘めたる恋心って感じ?」

「何それ」

「あたしも一応は女子ってわけよ」



目の前の泉を見る。

男勝りでサバサバしててわかりづらいけど、実は相当の美人だ。


泉は長い、ストレートのロングヘアーを無造作にかきあげる。


「理解できた?那菜」

「でも……告ってもしだめだったら、気まずくなるんじゃない?友達でもいられなくなるんだよ?」

「そんなのわかってる」

「ファンクラブの人たちに目つけられるかもよ?」

「あたしが負けると思う?」



……思わない。

負ける気がしない。



泉は弱虫な私とは違う。


ファンクラブの人なんてボコボコにしちゃいそう。


「おい、那菜。今あたしが、ファンクラブのやつらをボコボコにしそうだとか思ったっしょ」

「えっ!泉って人の心も読めるの!?」

「んなわけないっしょ!顔に書いてあるんだよ」

…………。

私って、そんなにわかりやすいのか。




「……ほんっと、わかりやすいんだから」

「え?」

「なんでもない」









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