私と彼との政略結婚
ほんの少ししかいなかったあの家は、嫌な思い出しか思い出させない


そんな家のソファに彼は静かに座っていた


「久しぶり


元気にしてたか?」


「久しぶりなんてよくいってられるわね


なんのために呼び出したのよ」


「なんのって、君が逃げ出したからだろ」


「もういいじゃない


『私の妻は逃げました』ってことで」


「それじゃあ世間的にダメだろう」


そう言った彼の目には何も写っていないような気がした


その目をみて私は直感的に、子供がいることを隠そうと思った


理由はない


でも、教えてしまったら、元には戻れないような気がした

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