加賀宮先輩は振り向いてくれない
第1章 


勢いよく開いた部室棟の一番手前の部室のドア。横開きのためパァーンッ!!と軽い音が響いた。

その中から走って出てくる黒髪の男子と、随分と背の高い茶髪の男子。
黒髪の子は大声で笑いながらこっちへ走ってきて、茶髪の男子は怒りがにじむ不気味な満面の笑みでそれに続く。


黒髪の子がこっちに近づいてきて私の目の前でスピードを緩めながら


「ごめんちょっと隠れさせて!」


そう言って私の背後に回った。
うん、おかしいぞ。部室から出てきたときはなんとも思わなかったというか、平均より低めな身長なのかなって思ったんだけど違ったわ。175位ありそうだね君。私は女子にしては大きいけど流石に君は隠せないなー。そもそも初対面の美人な女子に向かって「隠れさせて!」ってなに。かくれんぼ中かな?私は公園の遊具かな?

なんて考えが数秒続かないうちに茶髪の人が数mの距離だ。

あれ、大きいぞ?縮尺間違えてるのかな?190cmはありそうだなー。怖いぞー。進撃してきた巨人かなー?って違う違う。ビックリするぐらい整った顔だ。甘茶色お洒落に言うならスイートブラウンの髪の毛に鼻筋の通った端正な顔立ち。身長とは裏腹に童顔で、総括すると心臓止まりそうなほどイケメンだ。

ハーフパンツからすらりと伸びる長い足に、ナイロン生地のTシャツの袖から伸びるほどよく筋肉のついた腕。見惚れてしまいそう、というか見惚れてました。


「おい楠!調子のんな!」


「やだなー。コミュニケーションですよ、コミュニケーション。加賀宮先輩カルシウム足りてないっす!」


「楠!!」


私を挟んで仲良さそうな言い合いを繰り広げる高身長男子sに戸惑いを隠せないでいると茶髪の人が私をまじまじと見つめた。顔は伏せている為スタイルしか見れないだろうけど、まぁスタイル抜群の私はスタイルだけでも美しい。
頭から爪先まで眺めて笑いをこぼす。


「ははーん楠。俺を利用してこの子と絡みたいんだな?」


「へ?いやいや、先輩がこの子─────」


この子って私か。そうか美人で聡明な私のお近づきになりたかったのか。大成功だぞ。入学早々こんな体験させられたら一年は忘れない。楠君と加賀宮君な、おっけー覚えとく。
頭はいつも通り素早く回転する、声を一切発してないだけだ。それを何か勘違いした黒髪の男子は喋るのを止めて私の横に立って言う。


「ほら先輩が進撃する巨人だから驚いて言語障害起きてますよ!」


「は?いやいや、絶対お前の声がデカいから耳が痛いんだろ。大丈夫か?」






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