加賀宮先輩は振り向いてくれない


大丈夫かと問われれば7割は大丈夫なのだ。残りの3割は高身長男子二人に挟まれる恐怖があるので勘弁してほしい。
返事を返さない私の顔を覗き込んだ茶髪の男の子が一言、無意識に近い呟きを落とす。


「美人だな・・・」


私のご尊顔を拝見できた時に洩れる感嘆の声は心地好い。上目遣いを意識せず、自然に、顔を上げれば茶髪の人の顔が思ったより近くにあって驚きだ。


「あ、ごめんな。」


一歩後ろに下がった茶髪の人の隣に黒髪の子が移動して2対1の対面になる。


「え、めっちゃ美人じゃないですか。しかも始めて見る顔っすね。」


「俺も見たことねえな。1年か?」


私を差し置いて話を始める二人。どうでも良い話だけどこの空間平均身長高めだ。


「あー今日入学式っす。君一年?」


「は、はい。」


戸惑いを意識しながら返事をする。ちょっと困ってるぐらいが可愛いのだ。


「いやー入学そうそうごめんねー。俺2年の楠 夜一(クスノキ ヨイチ)。こっちは3年の加賀宮 諒太(カガミヤ リョウタ)先輩。」


黒髪の子が自己紹介をしたので私も柔かに微笑みながら自己紹介しよう。


「一年の結城 時雨です。よろしくお願いします。」


はいずっきゅーん。ちょろいぞ楠先輩。顔を赤くした楠先輩を見て加賀宮先輩が爆笑する。


「楠、一目惚れか?」


「いやこんな美人俺には勿体ないっす!」





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