不機嫌な恋なら、先生と

「先生、私がはじめ秘密の恋というタイトルを聞いたときにイメージしたことがあるんです。

それは、不倫や先生と生徒、兄妹の恋愛という、世間一般的にいう禁断の恋というものです。なので、作品を読む前に、そういう設定の話が書かれているのではないかと想像しました。

でも、先生の今までの話の中には、そういった類のものが一切出てこなかったので、そのギャップに驚いたんです。

先生の中での秘密というのは、もしかして胸の中に秘めた気持ちという意味があるのではないかと思います。

穏やかな恋の話もいいのですが、ここでイメージチェンジというか、少し雰囲気の違った作品を書いてみるのもいいのではないかと思うんです。先ほど申し上げたような禁断の恋といわれるようなベタな設定を盛り込んでみたら、また違った意味で読者を裏切って面白くなる気がするんです」

カフェのテーブルで向き合って座り、挨拶もそこそこに次回の打ち合わせの話を切り出すと、「どうしたの、箱崎さん。今日は初っ端から、飛ばしてるけど」と、先生は少し笑った。

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