不機嫌な恋なら、先生と
「……あのさ、訊いても良い?遙汰くんって、先生の彼女さんに会ったことある?」
「えっ?なんで?」
「いや。先生の恋愛観ってどんなのかなーって思って。恋愛小説書くの嫌がってたわりには、癒し系男子を書くのが上手いし、そういう風に付き合ってたのかなーとか、小説とちょっと混合して読んじゃって。だったら、すごい意外で面白いなって思ったの」
「まあ、会ったことはあるけど。どういう風に付き合ってたかは……わかんないけど。ああ、でも、けっこう冷たいところもあるんだなって思ったこともあったかな」
「冷たい?それは付き合い方が、クールってこと?」
「あー、うん。例えば、弟が彼女に手を出したからって理由で、彼女を振ったとか。彼女は被害者で何も悪くないのに」
遥汰くんは、フォークを動かす手を止めた。
「えっと……待って、弟って、遙汰くんだよね?」
「うん」
「えーと、その手を出したっていうのは……えっ? なんで?」
先生から聞いてはいたけど、悪びる様子もなくあっさり告白する彼には、少し驚き呆れた。
だけど「なんでって……」と言いよどむから、理由はさすがに言い出しにくいことのようだ。
やはり先生のことをよく思っていないのではないかと、また考えてしまう。
「……先生のこと嫌いなの? だからそんなことしたの?」