不機嫌な恋なら、先生と
「そうだったんですか」
「でも、今はすごく幸せです。箱崎さん、彼といいお付き合いしてるんですね」
「えっ?」
「そんなこと心配するの、彼女以外いないじゃないですか。それに、寝言なんて普通、聞けませんから。これからも、彼のことよろしくお願いします」
清々しさを感じる笑顔だった。
交差点で別れて少し歩くと足が重く感じ、歩くのをやめた。ビルの壁に寄っ掛かり、さっきの出来事を思い返した。
全部、私の勘違いだったんだ。
先生は、彼女とは何もなくて、まどかという名前を知らなかったのも、彼女が籍を入れたばかりで、今は仕事で関わる機会もないから、知らなくて当然といえば当然だった。
大変なことをしてしまったと、今更ながら、深い後悔が襲う。
とりあえず、謝らないと。
携帯を手にすると、遙汰くんから、着信があった。
『はい』
『あっ、なつめちゃん?』
『うん。どうしたの?』
『あのね、まどかの名前の意味がわかったよ』