レンズ越しの鼓動
「突然だけど、瀬戸さん。」
「は、はい。」
重い空気を切り裂いたのは、
相田さんの声。
相田さんは尚、腕を組んで、
不機嫌そうな表情で私を見る。
また何か、相田さんの癪にさわったのかと、
説教を覚悟して背筋を伸ばす。
……これは怒られたって仕方ない。
ドタキャンされたのは完全に私の、
管理不足が原因だ。
今度はどんな罵倒が飛び出すのかと、
ぎゅっと目を閉じて身構えた。
「俺ね、美しいものしか撮らないの。」
「は、はい。
よーく存じております。」
「そう。
なら、話が早いね。
瀬戸さんを撮らせてよ。」
「……はい?」
相田さんの口から飛び出した、
予想外の言葉に自分の耳を疑った。
今、相田さん、
私を撮らせてって言った?
あの相田さんが?
美しいものしか撮らない、
天才カメラマンが?
「えっと、撮らせて、とは?」
相田さんの言葉の意図がわからなかった私は、慌てて相田さんに聞き返す。