レンズ越しの鼓動
「モデルが居ないなら、
あんたがモデルになればいい。」
「はい!?」
聞き返して出てきた相田さんの二言目は、
さっきよりも更に意味がわからないものだった。
私がモデルなんて、
この人なに言ってるんだろう。
焦りすぎておかしくなっちゃった?
「えっと、まず落ち着いてください。」
「その言葉そっくりそのまま瀬戸さんに返すよ。」
慌ててそんな意味のわからないことを言い出したのかと思い、相田さんを落ち着かせようと言った言葉は、至って落ち着いている様子の相田さんに淡々と跳ね返された。
……いやいやいや、
相田さんがそう言ったって、
そんな簡単にできるわけがない。
慌てて抵抗しようとする私に相田さんは至って冷静に話を続けた。
「瀬戸さんはモデルに比べたら美しくないし、
まぁ、劣ってるよね。」
「なんかすごい失礼なこと言われた気がしますけど、まぁ続きを聞きましょう。」
「髪は無造作に縛ってるし、
メイクだって、“出掛ける前に急いでやりました”って感じだし。」
「……否定できない。」
ずばずばと言い当てる相田さん。
まぁ、確かに、今日は寝坊して、
慌ててやったけど!
言い方にとげを感じるんですけど!
相田さんの言葉に少し傷つきながらも、
大人しく相田さんの言葉を聞く。