レンズ越しの鼓動



「あ、もしもし?
ポスターのモデル、居ないんだったら、
瀬戸さんをモデルとして使いたいんだけど。
て言うか、そうじゃなきゃこの話はなかったことに。」


「あ、相田さん!?」


相田さんがかけた先は私が勤める会社だった。
表情を全く変えず、
淡々と話続ける相田さん。


……さすがというかなんというか。
凡人には理解できない行動力。


妙に感心しながら、
相田さんを見守る。


しばらくすると電話を終え、
携帯を返してきた相田さん。


「ど、どうでした?」


……どうかモデルをしなくて済みますように!

心の中で祈りながら相田さんに聞いてみる。


「大丈夫だったよ。
よかったね。」


「嘘でしょ!?」



よかったね。って、
全然良くない!


満足そうに、
目を細目ながら言った相田さん。
……私の祈りは届かなかった。


……嘘。
本当にやらなきゃいけないの?


いざ、決まってしまうと、
不安とかそういう感情ではなく、
“あ、普段モデルさんってこんな心境なのかな”
と、ひどく冷静になった。



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