レンズ越しの鼓動
「でも、撮りたいと思った。」
「え?」
「そうだな、
瀬戸さんの言葉を借りるとするなら、
“カメラマンとして、
瀬戸さんと仕事してみたいと思った。”
そんな理由じゃだめ?」
いつだったか、私が言った言葉を、
小さく微笑みながら相田さんは言った。
……そんなこと言われたら、
もう何も言えない。
相田さんに完全に言い負かされた私は、
俯いたまま、小さく言った。
「……だめじゃないですけど。」
「……けど?」
「相田さんがそう言ったって、
クライアントや、事務所の人が何て言うか。」
「異議がある人には、
“瀬戸 結子をモデルとして使わなければ、
俺は撮らない”
とかなんとか言っとけばいいよ。」
そう言ってまた、自信満々に、
小さく微笑んだ相田さん。
……その笑顔、なんかすごいむかつく。
でも、すごく安心する。
「じゃあ、さっそく。
瀬戸さん、携帯貸して。」
「え?あ、はい。」
ん、と出された手に、
携帯を置く。
すると相田さんは、手早くボタンを押して、
どこかに電話をかけた。