イブにあいましょう
すかさず私はベッド状態に倒していたシートを、座れる椅子状態に戻して、「ちょっと紀章さんっ」と囁いている間に、客室乗務員がメニューを持って来てしまった・・・。

「こちらがメニューでございます。お粥ですと、梅か昆布。スープですと、ブイヤベースか、かぼちゃのポタージュがございます」
「あぁ、じゃあ・・・かぼちゃのポタージュを」
「かしこまりました、一条様。本田様もご一緒に何か召し上がりますか?」
「そうだな・・・じゃあ僕は和食のコースをお願います」


というわけで、とんだきっかけで8年ぶりに再会を果たした紀章さんと私は、ファーストクラスの快適なシートに身を沈め、隣同士の席で、一緒に食事をして・・・。

「美味しいね」
「粥食べるか?美味いぞこれ」

なーんて気軽に会話をしているのが、なんだか夢を見ているみたいで・・・信じられない。


その後、「着陸まであと3時間はあるから寝てなさい」と紀章さんに言われた私は、彼の指示におとなしく従うべく、すぐ眠りに落ちた。
実際眠気があったこともあるけど、隣に彼がいるということが、私にとっては安心感につながったのも、すぐ眠れた理由かもしれない。

8年経ってもいまだに。
8年の間、離れていても。
紀章さんは、私の人生に影響を及ぼし続けている男(ひと)だということが、この再会で改めて分かってしまった。

< 11 / 60 >

この作品をシェア

pagetop