イブにあいましょう
仕事の合間に、追想
帰国の飛行機内で、元夫の紀章さんに、8年ぶりに偶然再会した。
看病してもらったお礼くらい言いたかったのに、ターミナルで会うこともなく。
今の番号もアドレスも分からないし、今、紀章さんがどこの病院に勤めているのかも知らない私は、結局彼と連絡を取ることもできないまま、2週間経った。

あれから私は、紀章さんと再会する前と変わらない日々を過ごしている。
仕事・仕事、そして仕事の合間に休息を取る。
だけど、その休みも仕事に関わることが多い。
まぁ、私の場合、料理が仕事だから、生活に密着しているわけで、切り離すことはできないし・・・。

だから、楽しんでやれてると思う。

「合鴨オッケー!これでラストね!」
「はいっ!」
「じゃあこれ、持って行きまーす!」
「よろしく!そろそろみなさん着席する頃よね。じゃあデザートの盛りつけしましょう」
「はいっ!」

限られた時間内で、みんな一丸となって一つのものを創り上げていくことが好き。
緊張感が漂いながらも、和やかな雰囲気が好き。
だから、料理は好き。

そう思えるようになったのは、紀章さんと離婚した後。
やっと、自分の力で自分の人生を歩み始めたと実感できるようになってからだ。

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