御曹司と溺甘ルームシェア
俺が怒りを抑えながら能面のような顔でじいさんに釘を刺すと、寧々が俺を止めに入った。

「こら、冷泉!」

自分が寧々に注意されたと勘違いしたじいさんは、急にしゅんとした表情になって返事をした。

「はい」

「あっ……いえ、会長ではなくて……。そこにいる陰険……あっ!」

じいさんがいる手前、気まずそうに手で口を押さえる寧々。

これは面白い。良い機会だ。俺の事を名前で呼ばせよう。

「この会社には俺以外にも『冷泉』がいる。いい加減、下の名前で呼べよ」

ニヤニヤしながら寧々にそう指摘すると、彼女は頬をピンクに染めながら俺の名前を呼んだ。

「うっ……。ひ、ひ、響人!自分の事棚に上げて会長を説教しないの。あんた私の事触りまくってるじゃない!」

声を大にして俺を注意した寧々は、言ってしまってから自分の失言に気づいたのか、両手で頬を押さえ茹で蛸のように真っ赤になった。
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