御曹司と溺甘ルームシェア
寧々がプライドをひけらかすのは、彼女が毛嫌いしている男の前でだけ。

その毛嫌いしている男の中に俺は入っていたが、そんな彼女とのやり取りを学生時代は楽しんでいた。

寧々だけが、俺を冷泉商事の御曹司ではなく、ただの冷泉響人として見ていたからだ。俺に対して遠慮なく物を言う彼女は俺にとって貴重な存在だったと言える。

大抵の女は俺を崇めるように見ていて、話をしても全く面白くなかった。

対抗意識剥き出しで俺に挑むあのブラウンの綺麗な瞳。

あの瞳を見るとワクワクした。

だが、高校二年のサマーキャンプのあの事件以来、俺は寧々との接触を避けた。

あの日をきっかけに寧々は男嫌いになり、男性に触れるとじんましんが出る体質になった。

寧々はあの事件の事を何も覚えていない。

男嫌いの原因を作ったのは俺だと彼女は思い込んでいるが、本当は違う。

あえて訂正しなかったのは『そっとしておいてやって欲しい』と鷹頼に頭を下げられたからだ。
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