御曹司と溺甘ルームシェア
寧々があの日の記憶をなくしたのは、本能が彼女を守るためだったんじゃないだろうか。

それだけショックな出来事で、あの時の寧々は事実を受け入れられなかったと思う。

当時は寧々のためにもそれでいいと思っていた。辛いことを思い出さなければ、じんましん体質もいつかは治る。そう期待していた。

だから、あの時の話は二度としなかったし、俺自身が彼女に近づかないようにしていた。

同じクラスにいても寧々には挨拶もしなかった。それを寧々は冷たくてプライドの高い男だと誤解したが。

社会人になってパーティで寧々を見かけても、近づかないようにしていた。俺の顔を見て記憶が戻ることを恐れたんだ。

だが、二週間前の同窓会で彼女と久々に顔を合わせた時、このままではいけないと思った。

寧々のじんましん体質は改善していないし、彼女の我が儘ぶりはエスカレートしている。

寧々を心配して鷹頼はずっと彼女の下僕のような生活をしてるし、彼女の父親も彼女を溺愛していて娘の言いなり。

寧々の環境を変えなければ彼女は変わらないし、鷹頼だってずっと彼女の世話をすることになる。

そこで、俺は沈黙を破って動く事にした。

まあ、俺が寧々に近づいたのは、彼女の『マザコン』発言にムッとしてだったが……。

野々宮家具が倒産するとかいう話は、俺が婚約者と認めさせるための真っ赤な嘘。
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