クールな社長の甘く危険な独占愛
「お前が家に帰るよう、もう手はずは整えてある。お前がなんと言おうとも、家に帰ってくることは決まってるんだ。せいぜい足掻くといい」
父親の声が背中から聞こえてきたが、和茂はそのまま社長室を出た。
嫌な汗が流れてくる。どうしたらいいのかわからない。決断を迫られると、いつも逃げてきた。その場限りの嘘を言って。浮ついた自分と、父親そっくりの自分。
本当の自分はどこにいる?
「おい、カズ」
武則の声に、突然現実に引き戻された。廊下に佇む和茂の腕を武則が掴む。
「大丈夫か?」
「……ああ」
和茂はなんとかそう言ったが、本当は考えがまとまらない。
「長尾さん、どうするつもりだ?」
「……結婚しないよ。兄貴と一緒だ」
「じゃあ、手放すのか?」
「……知るかよ」
いきなり武則にネクタイをつかまた。ぐっと締まって息がつまる。そのままバンッと壁に叩きつけられた。その衝撃でメガネが飛ぶ。
武則がぐいっと顔を近づけて、和茂の瞳を睨みつけた。父親を彷彿とさせる、鋭い眼光。
「腹を決めろ。本気で欲しいなら、中途半端なことはするな」
「タケには関係ない」
和茂も負けじと声を張り上げた。
「いちいち口出してくんな。保護者面しやがって。お前、さつきに『俺を信用するな』って余計なこと言っただろう? ふざけんな。勝手にアドバイスしてんじゃねーよ」
「じゃあ、お前は、どうなんだ?!」
武則が怒鳴った。