クールな社長の甘く危険な独占愛

「お前は美麻になんて言った? 『逃げろ』って言ったよな。気軽に、なんてことないように」
武則の瞳が怒りで揺らぐ。

「俺たちは、確かにあのとき悩んでた。美麻がだんだんと弱っていくから、いっそのこと離婚したほうがいいのだろうとも、考えた。でも俺はまだその言葉を口には出してなかったんだっ。彼女を手放すなんてことできるわけがない。これからの俺の人生に、なんの喜びもなくなる。そういうことだって、理解してたから。でもお前は」

武則が歯をくいしばる。

「お前は、美麻に言ったんだ。俺から、この家から逃げろって。美麻はお前に言われたら……」

言葉に詰まった武則を見つめる。

「愛してたお前にそう言われたら、美麻は迷わず逃げるに決まってるだろう?」

和茂は「え?」とおもわず声を上げた。
「何、言ってるんだ、タケ」

「美麻は、お前を愛してたんだ。心から愛して、でもお前からは絶対に愛してもらえないことも知っていた」

武則の手が緩む。和茂は乱れた呼吸で、憔悴しきった武則を見つめた。

「俺が美麻に会ったとき、彼女は報われない思いに泣いていた。美麻がお前を思い続けててもいい、と思ったんだ。俺たちは夫婦になってから、ゆっくりと俺たちの愛の形を作っていくのだからと」

武則が髪をかきあげ、深いため息をついた。

「彼女が俺の中にお前を見ていても、辛くはなかった。未来が描けたから。手をつなぎ、キスをして、俺たちだけの時間を過ごしていけたら、きっと二人は幸せになれると、そう思ってたんだ」

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