クールな社長の甘く危険な独占愛

「だ、大丈夫だよ」
昌隆が身体を起こして、唇の血を拭う。それから和茂を見上げた。

その目が言わんとすることがわかった気がして、和茂は思わず目を逸らす。

あいつに、変な勘ぐりをされた。
俺が、誰かに恋をするなんて、そんなことある訳ないんだから。
完全に誤解。

「社長、ひどすぎます。謝ってください」
さつきが涙目で非難してくる。

和茂は先生に叱らられたような気持ちになって、プイッと横を向いた。

「俺、帰るよ」
昌隆が立ち上がる。

「ねえ、病院に……」
「大丈夫。それほど痛くなかった。あの人、殴り慣れてないよ」

あいつ、鼻で笑ったな?

和茂のイライラは募るばかり。

「駅まで送る」
さつきが言う。

「いい、タクシー拾うから。それにちょっと……一人でいろいろ気持ちを整理したい」
昌隆は頑なにそう言った。

「ちゃんと返事するから」
さつきが昌隆の手を取る。

それを見て、またむかっとしたが、どうしてむかっとするのかは分からない。

「じゃあ、また」
昌隆は顎に手をやって顔をしかめると、道路へと歩き出した。

和茂はジャージのポケットに手を入れて、見送るさつきの背中を眺める。

無性に腹が立っている。

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