二十年目の初恋
痛み 22
「悠介、気が早いよ。先ずは初夏の温泉を楽しんでからね」

「そうだな。露天風呂が綺麗らしいよ」

「えっ? 露天風呂?」

「一緒に入ろうな」

「でも私、露天風呂って入ったことないんだけど……」

「えっ? ないのか? 何で」

「何でって、恥ずかしいじゃない。見られたら嫌だし」

「俺の優華は、こんなに綺麗な体してるんだぞって、みんなに見せつけてやりたい」

「本気で言ってるの?」
 悠介の顔を覗き込んだ。

「嘘。絶対、俺以外の奴には見せないよ。勿体なくて見せられません。俺だけの優華だからな。あっでもリスや鹿が見ていくかも」

「えっ、いるの?」

「いるかも」

「な~んだ」

「ちょっと休憩するか?」

「うん。休憩した方がいいのは悠介でしょ?」

 車は高速のサービスエリアに入って行った。

「さてと何か食べようかな?」

「朝、食べなかったの?」

「時間なかったから」

 やっぱりモーニングコールすべきだったわね。でも早く起きたからって食材が無ければ何も出来ないか……。

 悠介は朝から大きな海老の天ぷらうどんを持って来た。

「美味そうだろう? うん。美味い!」
 幸せそうな顔……。

「うどんっていうのは分かるけど、天ぷら? 朝から?」

「しっかり食べて体力つけておかないと」

「ん? ドライバーは疲れるから? 私、運転、替われないからね。ペーパードライバー長いから」

「優華に運転を任せたら、温泉どころか病院行きだよ」
 悠介は笑ってる。

 酷い。ありえるけど……。ちょっと悔しいけど反論出来ない。

「じゃあ、私は助手席で、ゆっくり眠らせて貰いますから」

「どうぞ」
 余裕の笑み……。

「気が付いたら二人で天国なんて嫌ですからね」

「二人で一緒に天国に行けるなら、俺は嬉しいけどな」
 天ぷらうどんを食べながら悠介が言った。

 私はカフェラテを飲みながら悠介の顔を眺めてた。


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