二十年目の初恋
二人 12
 甘い痺れが残ったままの体で、うつ伏せの私は背中に悠介の擽るような指先を感じていた。

 何度、抱かれても恥ずかしい気持ちはなくならない。悠介に優しく見詰められると思わず目を逸らしてしまう。

 初めてな訳でもないのに……。

 初めての……。私の初めてが悠介だったら良かったのに……。そんな今さら考えても仕方の無いことを後悔してもしょうがないのに。バツイチの私が……。


 初めての人に生涯、愛されて、おばさんになっても、おばあちゃんになっても裏切られることもなく愛され続けたら、それは女として最高に幸せなことだと思う。


 過去を振り返って後悔するのは止めよう。誰に強制された訳でもない。自分で選んだんだから。

 今の自分の気持ちと悠介の気持ちを信じよう。

「優華。なに考えてるの?」

「えっ? ううん。なんでもない」

「本当に?」

 髪を撫でられて優しく見詰められた。

「今、すごく幸せだから、もっと前から幸せだったらって。私、欲張りだから、そう思ってたの」

「そうだね。俺もそう思うけど」

「私の初めての男の人が、悠介だったら良かったのにって……」

「優華、そんなこと気にすることじゃないよ。優華の初めてか……。初めてが俺だったら優華は生涯、男は俺しか知らない。そうだったら良かったと思わなくはないけど。今、優華は俺だけのものだから、それで充分だよ。充分過ぎるくらい俺は幸せだと思ってるよ」

「悠介……」
 優しさに涙が出た。だから悠介と、ずっと一緒に居たかったのに……。

「優華、泣き顔も嫌いじゃないけど、やっぱり優華は笑ってる方がいいな。朝から頑張ったから、お腹空いた。朝ご飯、食べに行くか?」

 悠介は私の頬の涙に、そっとキスして

「愛してるよ。優華」

「悠介。私も愛してる。ずっと一緒に居てね」

「ずっと一緒だよ。決まってるだろ」

 悠介の笑顔がとても頼もしくて眩しかった。


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