二十年目の初恋
二人 13
 朝食では昔ながらの和食の美味しさに満足して部屋に戻った。

「チェックアウトは十時だから、もう一度、露天風呂入るか?」

 そう悠介に言われて朝風呂を楽しむことにした。

 朝の露天風呂ってなんだか、ものすごく贅沢な気分がする。昨夜、入った時には周りはもちろん真っ暗で、それはそれで、また風情があって良かったのだけれど。

 朝靄のかかった山々が、うすい水色の空に映えて思わず見惚れてしまう。

 この季節は若葉の緑が生き生き見えて本当に美しい。

 お湯に浸かって悠介が言った。
「また来ような」

「うん」

「次は秋? 冬かな?」

「悠介と一緒なら、いつでもいいよ」

「優華、やっぱりこっちおいで」

 今朝は向かい合って、お互い足を伸ばして反対側にそれぞれ座っていたから。お湯の中を移動して悠介の隣り。そうしたら、やっぱり悠介の膝の上に座らされた。

「温泉のお湯で優華の肌、前以上にスベスベだな」

「そう?」

「あぁ、優華より俺の方が詳しいんだよ」

「どうして?」

「優華には見えないところまで俺は見てるから。自分では見えないだろう? 背中とか……」

「そうね。私より悠介の方が知ってるんだ」

「そうだよ。もっといろいろとね」

「その言い方、ちょっといやらしいよ」

「いやらしくなんかないよ。正直に優華は綺麗だって言ってるんだから。俺が、どれだけ幸せか優華には分からないだろうな」

「じゃあ私が、どれだけ悠介のこと愛してるか分かる?」

「えっ? そうだな……。でも俺が優華を愛してる気持ちの方が大きいと思うよ。きっと」

「そうね。そうかもしれない。私ね。たぶん……。こんなに愛されたことなかったと思う。悠介に愛されてるって、すごく感じるもの」

 悠介が私の唇にそっとキスして

「さぁ、そろそろ帰るか」

「うん。支度するね」


< 47 / 147 >

この作品をシェア

pagetop