二十年目の初恋
二人 14
 身支度を済ませてチェックアウト。

「ありがとうございました。また、お越しくださいませ」の声に

「お世話になりました」と旅館を後にした。


 車に乗って来た道を辿って帰る。

 運転する悠介の横顔が男らしく素敵に見えた。悠介に見詰められると恥ずかしくて、どうしていいのか分からなくなるのに……。

「どうした? 俺の顔に何か付いてるか?」

「ううん。そうじゃなくて、悠介って意外とイケメンだったんだなぁって思って」

「今頃、気付いたのか?」

「うん。そうなの。今頃、気付いた」

「会社でも女子社員にモテるんだからな」

「えっ? 女子社員いるの?」

「いるよ。今年、卒業して入って来た二十歳の子がね」

「二十歳か……」

「うん? どうした?」

「もう一度、二十歳から遣り直せたらなぁって思っただけ」

「そうだな。そうしたら俺は成人式に何が何でも帰って来て、振袖姿の優華に告白して貰うけどな」

「分からないよ。いざとなったら言えないかも……」

「じゃあ、今のままでいいよ。優華は傍に居るし、これ以上の望みはないから」

「悠介……」

 膝に置いた手が悠介の大きなあったかい手で包まれた。

「優華、急ぐ訳じゃないけど、出来れば近い内に優華のご両親と家の親に挨拶に行こうと思うけど、どう思う?」

「うん。そうよね。いいよ。私は」

「俺は土日は、まず休みだから、いつでもいいよ。優華のご両親の都合を聞いておいてくれるか?」

「うん。私も土日は、お休みだから電話して聞いてみる」


 サービスエリアで何度か休憩しながら食事もして高速を降りたら、見慣れたいつもの街並み。

「帰り道は早いね。もう着いちゃったって気がする」

「またいつでも連れて行ってやるよ」

「うん」

 温泉のお湯が癒してくれたのかな……。

 何よりも悠介と過ごした時間が、とても幸せで。

 きっと悠介と二人なら、この先、何があっても一緒に笑い合って生きていけるような気がしていた。


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