強引同期が甘く豹変しました
「…よし、完了!」
座ったまま両手をぐんと広げたのは、時刻が定時の18時になろうとしていた頃だった。
矢沢の目標達成に触発されたわけではないが、珍しく気合いを入れて午後から一気に仕事を片付けた結果なのだろう。
明日の午前中までには仕上がっていればいいか、なんて思っていた仕事は見事にスッキリと片付けられてしまっていた。
やれば出来る子じゃん?
久しぶりに、自分で自分を褒めてやりたいくらいだ。
「何ニヤついてんだよ」
だけどその時、背後から聞こえてきたその声で、伸びをしていた腕がビクッと縮こまった。
振り返らなくてもわかる。声だけで、矢沢だと。
「別にニヤついてませんけどー」
言いながら後ろを向くと、こちらを見下ろす矢沢と目が合った。
「なんか良いことでもあった?」
「別に?っていうか何?」
「あぁ。えっとさ…」
矢沢はそう言うと、何故か屈むように私の耳元に顔を近づけてきた。
そして、小さな声でそっと言う。
「今日、一、二時間は残業になりそうでさ。帰るの遅くなるかも」
「…そう」
「だから適当に帰って勝手にくつろいでて。メシ作るならキッチン使っていいし、テレビ見たかったらリビングで見てればいいし」
「…うん」
ヒソヒソと話していると、モロに秘密を共有しているような気になってくる。
ワケあり同居とはいえ、周りに聞こえたらどうしようって、何でいちいちドキドキしてくるんだろう。
それに、距離も!
そろそろ離れろ!怪しまれる!