強引同期が甘く豹変しました
「あとさ」
耳元で聞こえる矢沢の声。
心臓の鼓動が、さらに加速していく。
だけどそれを感じられないよう、私は努めて平静を装った。
「何?」
「…すっげー腹減ってんの、俺」
「え?」
「大丈夫だったらでいいから」
「えっ…」
「何でもいいから。何かメシ作るなら俺の分も作ってて?あ、何でもいいは訂正。唯一食えないのが」
「きゅうり。でしょ?」
つっこむように言いながら、思わず笑ってしまった。
矢沢のきゅうり嫌いは異常レベルなので昔から知っている。
「…そう。だからきゅうり料理以外で」
きゅうり料理って何。
メインにきゅうりって…あんたはコオロギか。
「了解。なんか作っとく」
「えっ?マジ?」
マジ?って。頼んできたのはあんただろう。
「うん。だから早く向こう行って」
「へっ?」
「コソコソ話してたら変でしょ?」
私がそう言うと、矢沢はバツが悪そうに苦笑いを浮かべてすぐに離れていく。
私はその後ろ姿を見ながら、思わずクスッと笑った。