強引同期が甘く豹変しました
「…矢沢?」
聞こえてきた声に、思わず胸がドキッとした。
声のした方に、ゆっくりと振り向く。
「おう、お疲れ」
俺は平静を装いながら、永井にそう言った。
「っていうか本当に待ってるし」
ほんのりとピンク色になった頰。
寒そうに肩をすくめる、華奢な体。
「本当バカじゃない?こんなに寒いのに。何でこんなとこで待ってるの」
そしてそう言いながら笑った永井を見た瞬間、何故か衝動的に…その体を抱き寄せていた。
「っ、な、何⁉︎いきなり」
「…わかんねえよ」
「はぁ⁉︎ちょっ、また酔ってるの⁉︎わかんねえって、それこっちのセリフ!」
腕の中で軽く暴れる永井。
今度は力強く、その体を抱きしめた。
「別に酔ってねーよ」
「は⁉︎じゃ………何で」
永井から、力が抜けていくのを感じた。
「何で…こんなことするの」
「…何でって」
「こんなのあの人が見たら…勘違いするよ?」
今にも消えてしまいそうなくらい、弱い声。
それから、訳のわからない言葉。