強引同期が甘く豹変しました


「あの人って誰」

「はぁ⁉︎何言ってんの?家に来てた…女の人に決まってるじゃない」


家に来てた…女?
それって、もしかして。


「あいつ、おまえに自己紹介してこなかったの?」


抱きしめたまま、耳元で言う。


「…そんなの、されてない」


その言葉を聞いて、俺は思わずため息が出た。


「マジか。普通はするよな、姉なら姉ですって」


そしてそう口にすると、腕の中に埋まっていた永井の顔が、急に俺を見上げる。


「えっ⁉︎お…姉さん、だったの⁉︎」

「そ…うだけど」

「…そう、だったんだ」


永井はそう言うと、何故か気まずそうにうつむいてしまった。


「え、何?おまえもしかして勘違いしてた?俺の女じゃないかとかって」

「……だって、勝手に家に出入りできるなんて、鍵持ってるんだな、とか。女物の服とか偶然見つけちゃってたら、そりゃ…勘違い…しちゃうでしょ」


視線はずっと下を向いたまま。
永井はボソボソとそう答えた。

まぁ、確かに?
あいつがちゃんと姉だと言わなかったわけだから。勘違いされても、仕方なかったのかもな。


「ごめん。挨拶もしない失礼な姉貴で」

俺がそう言うと、永井は小さく頷いて。
「私もごめん」と、謝ってきた。


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