強引同期が甘く豹変しました



あれからもう、気付けば十年以上が過ぎた。

10代で東京に出てきたはずの私は、あと三カ月で30代になろうとしている。

都会の騒がしい空気にも。人の波に揉まれながら歩くことにも。夜なのに、いつまでも街が明るいことにも。

歳を重ねるごとに、いつのまにか慣れてしまった。

緑の中の凛とした空気や、前を見ても、後ろを振り返っても田んぼが並ぶ田舎の景色。
冬は一面が銀世界に変わり、真っ白なそこには、自分の歩いた足あとがつく。
月明かりが落ちてきそうな静かな夜は、耳を澄ませばいろんな虫の声が微かに響いていた。


いつからだろう。
あの町が遠く感じるようになったのは。

いつからなんだろう。
私の世界が、この都会中心になったのは。

いつからなのかな。
生まれ育った場所が、懐かしいと思うような…そんな場所に変わっていったのは。


行くあてもなく電車に揺られていると、ふと田舎の両親の顔が浮かんでくる。

…風邪、ひいてないかな。今年は雪、大丈夫かな?

毎年夏と冬の連休には帰省するようにしているけど、そういや最近はゆっくり電話も出来てなかった。

今年の正月休みは、タイミング悪くインフルエンザに罹ってしまって帰省も出来なかったしな。

そろそろ電話がかかってきそうだし。近いうちに有休でも使ってゆっくり帰らなきゃな…。


って…いや、でもその前に!
私の今の現状をどうにかしなくちゃ。

このままじゃ、田舎に強制送還なんて展開にもなりかねない。


窓の向こうの移り変わる景色をぼーっと見つめながら、私は思い立ったように次の停車駅で電車を降りた。



この駅だと、会社からは通勤面でも便利だよね?


ゆっくり歩きながら、周りを見渡す。


駅前なら不動産屋も多いはずだし、とりあえず…行ってみるか。



我ながら行動がゆるすぎる気はするけど。

とにかく早く住むところを探したかった私は一人で駅前を歩き出した。


するとすぐにいくつかの不動産屋が見つかって。

ふと目に止まった不動産屋の前で立ち止まると、店舗のガラスに貼られているたくさんの物件図を見ながらジーッと見入っていた。



だけど、その時。

カバンに入れていた携帯が音を鳴らして。


着信相手を確認した私は、休日に一体何事かと思いながらもその電話に出た。



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