強引同期が甘く豹変しました
「つーか、タイムリミットって何だよ」
「長野に連れて帰られるってどういう意味?」
その声で、思わずハッとなった。
そうだった。
矢沢に杉崎…今はこの二人も一緒だったんだ。
そう思い出した途端、私は慌てて顔を上げ、涼しい顔を作ると落ち着くようにジョッキを手にしてビールを飲んだ。
「何でもない。別にたいした話じゃないから」
冷静になれと自分自身に言い聞かせながら続けてビールを口にする。
だけど、空気を読んでくれない杉崎は紀子に向かって聞いた。
「何?やばいって。永井がピンチなら出来ることあるかもだしさ。言ってよ」
「いや、でも…」
紀子は全部わかってる。だからこそ空気を読んで、あえて言わないでいてくれた。
「言いたくないなら言わなくていいけど」
「そういうわけじゃないって」
「じゃあ何で言えないんだよ、中途半端に聞かされた俺らの身になったらさ」
「あのさー、人には言いたくない話だってあるってわからない?」
そしたら始まった、ちょっと険悪なムード。
杉崎は膨れてるし、そんな杉崎を見る紀子の表情は、困った顔をしている。
でも、その時だった。
「はいはーい!」
二人の気まずい空気を壊すように、矢沢の明るい声が飛んだ。
「おまえらさー、子供じゃねえんだから。とりあえずいちいち痴話喧嘩すんなって。ま、ビール飲んで落ち着け」
そしてそう言った矢沢は隣にいる杉崎にジョッキを持たせ、紀子の方にもとりあえず飲めと言わんばかりに目配せをした。