強引同期が甘く豹変しました



でも、次の瞬間。


「照れんなって」


からかうように、矢沢がニヤリと笑ったから…


「なっ、何で私が照れなきゃなんないのよ」


ドキドキする心臓の音を感じながらも、平静を装って普段通りにそう切り返した。

だけど近すぎる距離感はしばらく変わらないままで。早く着け、早く、早く…と、時間が過ぎるのを、ただジッと待っているしかなかった。


「大丈夫か?」

「うん、もう平気」


降車駅に着くと、そんな言葉を交わしながら矢沢の後ろを歩き出し、改札を抜けると自然と私たちは横並びになった。

会社は駅から徒歩三分という好立地に建っていて、通勤には最適な距離だ。

朝のオフィス街をテクテク歩いているうちに、私たちはあっという間にオフィスが入っているビルに到着した。


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