御曹司と愛され蜜月ライフ
「おい、卯月? ほんとにどうしたんだ?」

「よ、よかった、課長が生きてて……」



私のつぶやきに、「は?」と頭上からまた不思議そうな声が降ってくる。

いや、ていうか、私も突っ走りすぎだよね。いくら大きな音がしたからって、それで課長が死ぬなんて想像……。


顔を上げると、きょとんと目をまるくしてこちらを見下ろす近衛課長がいた。

初めて見る表情だ。今日もメガネをかけていなくて、ふたつのほくろが目立っている。



「何がなんだかわからないんだが。説明してくれ」

「や……あの、さっき、課長の部屋から大きい音したんで。何かあったのかと思って……」



口に出してみると、なんだか急に恥ずかしくなってきた。

考えてみたら、私あせりすぎ。勝手な妄想で部屋飛び出して、近所迷惑も考えずに大きな声と音出して……。


課長と顔を合わせていられなくなって、床に座ったままもじもじとうつむく。

ああ、と、頭上からまた声が降ってきた。



「悪いな、心配かけたようで。俺は大丈夫だ」

「……さっきの、何の音だったんですか?」



ちらりとその顔を見上げてみる。するとどうしてか、彼は気まずそうに視線を逸らした。

そのまま、言葉も返って来ない。今度はこちらが不思議に思って目をまたたかせる番だ。



「課長?」

「……ちょうどよかった。少し、助けてくれないか」



ぼそぼそと落とされたつぶやきに、私はまた、さらに疑問を深めるのだった。
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