御曹司と愛され蜜月ライフ
勢いとその場のノリ(としか思えない)で近衛課長に「またおかず持って来ましょうか?」なんて提案をしてしまったあの日から、すでに2週間以上が経過している。
その間、私は約束通りほぼ毎日隣室に手作りの品々を差し入れていて。しかもしかも、そのうち何度かは課長宅のテーブルを囲んで一緒に食事までしているのだ。
私としては自分が作った料理を渡した時点でミッション終了のつもりで、一緒に食べようなんてこれっぽっちも考えていなかった。
けれどもいつかの日曜日。平日よりもずっと早い夕方、親子丼の具を詰めたタッパーを持って訪れた私を玄関で出迎えた近衛課長が、「どうせなら一緒に食べないか?」と言って来たのだ。
もちろん最初は、動揺しつつも丁重にお断りしようとした。なのに思いのほか押しが強いらしい課長になんだかんだと言いくるめられ、結局私は再び近衛課長の自宅に足を踏み入れることになってしまい……。
連絡先を教え合ったのはこのとき。これもまた今思えばあれよあれよという間に流される形で交換することになり、その後課長は先ほどのように晩ごはんのリクエストまでするようになってきたのだ。
今まで私が作ったものに、課長がケチをつけて来たことはないけれど。わざわざリクエストしてまで食べたいと思っているものを作るのは、実は結構プレッシャーだったりする。
おかげで私、課長のリクエストを作るときはちゃんとレシピアプリ見るようになっちゃったよ。今までは目分量で大ざっぱに作ってたのにさあ……。
でも、近衛課長はいつも「おいしい」って言葉にしてくれる。
そして、最初の目玉焼きのときみたいに、やわらかく笑ってくれるから……だから私はいつも、まあいっかって、許しちゃうんだよなあ。
岩嵜さんと雑談しながらお弁当を食べ終えたとき、またスマホのお知らせランプが点滅していることに気付いた。
メール……近衛課長からだ。開いた本文を見た私はたぶんまた、さっき岩嵜さんに言われた『ビッミョー』な顔をしているのだろう。
【今日は早く帰れそうだから、ウチで一緒に食べよう】
……なんか……なんかさあ! いや本人は全然そんなつもりないんだろうけど、でもこれってなんかさあ……!!
「どうしたんですか卯月さん、お財布でも落としたんですかー?」
「や……なんでもない……」
不思議そうに声をかけてくる後輩になんとか返事をして。
私はスマホ片手にデスクでつっぷしたまま、深いため息を吐くのだった。
その間、私は約束通りほぼ毎日隣室に手作りの品々を差し入れていて。しかもしかも、そのうち何度かは課長宅のテーブルを囲んで一緒に食事までしているのだ。
私としては自分が作った料理を渡した時点でミッション終了のつもりで、一緒に食べようなんてこれっぽっちも考えていなかった。
けれどもいつかの日曜日。平日よりもずっと早い夕方、親子丼の具を詰めたタッパーを持って訪れた私を玄関で出迎えた近衛課長が、「どうせなら一緒に食べないか?」と言って来たのだ。
もちろん最初は、動揺しつつも丁重にお断りしようとした。なのに思いのほか押しが強いらしい課長になんだかんだと言いくるめられ、結局私は再び近衛課長の自宅に足を踏み入れることになってしまい……。
連絡先を教え合ったのはこのとき。これもまた今思えばあれよあれよという間に流される形で交換することになり、その後課長は先ほどのように晩ごはんのリクエストまでするようになってきたのだ。
今まで私が作ったものに、課長がケチをつけて来たことはないけれど。わざわざリクエストしてまで食べたいと思っているものを作るのは、実は結構プレッシャーだったりする。
おかげで私、課長のリクエストを作るときはちゃんとレシピアプリ見るようになっちゃったよ。今までは目分量で大ざっぱに作ってたのにさあ……。
でも、近衛課長はいつも「おいしい」って言葉にしてくれる。
そして、最初の目玉焼きのときみたいに、やわらかく笑ってくれるから……だから私はいつも、まあいっかって、許しちゃうんだよなあ。
岩嵜さんと雑談しながらお弁当を食べ終えたとき、またスマホのお知らせランプが点滅していることに気付いた。
メール……近衛課長からだ。開いた本文を見た私はたぶんまた、さっき岩嵜さんに言われた『ビッミョー』な顔をしているのだろう。
【今日は早く帰れそうだから、ウチで一緒に食べよう】
……なんか……なんかさあ! いや本人は全然そんなつもりないんだろうけど、でもこれってなんかさあ……!!
「どうしたんですか卯月さん、お財布でも落としたんですかー?」
「や……なんでもない……」
不思議そうに声をかけてくる後輩になんとか返事をして。
私はスマホ片手にデスクでつっぷしたまま、深いため息を吐くのだった。