御曹司と愛され蜜月ライフ
そんなことをぐるぐる考えていた私は、次の瞬間ハッとする。

……いや、いやいや。なに私、課長のことなんて考えてんの。

一応今、すぐ横に別の男の人がいるってのに。なんか私、すごく失礼じゃない?

って言ってもまあ……名前も覚えてないような人に、そんな気遣いすんのも無用なのかもしれないけど。でも、うん、だからって近衛課長のこと考える自分を許す理由にはならないよね??

どうした私、オカシイぞ。ていうかたぶん、それって近衛課長がアパートの隣りに引っ越して来てから。課長が隣人になってからの私、調子狂いっぱなし!



「──……ない? 撫子ちゃん」

「えっ? ああえっとあの、そうですね……!」



自分の思考にテンパって、全然横の人の話聞いてなかった。

あわてて適当に愛想笑いで返事をしたら、彼がにっこり笑みを深める。



「よかった。じゃあ、行こっか」

「へっ、」



聞き返す前に、ぐいっと肩を抱かれて方向転換させられた。

男性は思いのほか強い力で私の肩に手をやったまま、ほとんど私を引きずるように早足で歩を進める。

え、なに、こっちって駅の方向じゃないよね……?! 突然のことにわけがわからない私は、足がもつれそうになりながらも戸惑いをぶつけた。



「えっ、あの、どこに……っ」

「撫子ちゃんは、シンプルなとことちょっと変わったとこ、どっちが好み?」

「え?」



言われている意味が本気でわからなくて、ただうろたえる。

笑顔を崩さない彼が、足を止めないまま私を見下ろした。
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