バンテスト魔法書の保持者

『この世界は理不尽だ。


王族や貴族に生まれれば裕福な家庭で暮らすことができ、平民に生まれれば苦しい生活が続く


俺はそんな世界を変えようと思う』


そんなことが書かれているこの本。


随分と血の気が多い人が書いたのだろう。


「リューラー！どこですかー！？」


静かな書庫に響き渡る女性の声。


「あ、リューラ、やっと見つけましたよ！昼食の時間だから下りてきて下さい！」


本棚に寄りかかっているハシゴに座って本を読んでいる私に声をかける女性。


服は真っ黒な修道服を来ている。


彼女はここのシスター。


「ルルさん、私、お腹空いてない」


本から目を離さずそう言うと、下から怒鳴り声が聞こえた。


「何を言っているのですか！いつもいつも後からお腹が空いたと言ってくるじゃないですか！」


「今、空いてない」


「ダメです！そして、本を読む時はハシゴから下りて下さい！危ないでしょう！」


シスターのルルさんがプリプリと怒りながらそんなことを言う。


言うことを聞いた方が良いのだろうが、この本の続きが気になる。


この血の気の多い人の考えが非常に気になる。


この本は最近、街で噂になっている本だから。


ここの平民は、王族や貴族に対して良い印象をもっていない。


「これ、読み終わったら行く」


「ぅぅ、ああ、もう！わかりましたから、ハシゴから下りて読んで下さい！」


ルルさんは、私がこの教会に引き取られてからずっと世話をしてくれている。


なんだかんだ言って心配してくれているのだ。


だがしかし、ルルさんのいうことを聞く気にはならない。


本当に続きが気になるし。


「ハシゴから下りて本を読む。そして、またハシゴに登って本を返す、めんどくさい」