バンテスト魔法書の保持者
ルシータが軽くパニックになったその時


「ここにいたのか」


廊下に声が響いた。


状況をすでに理解しているかのように、淡々とこちらに向かってくる。


声がした方を振り向くと、ルシータは目を丸くして驚いた。


「あなたは‥‥‥リオウ、様?」


一瞬だけ、リオウの目がルシータに向く。


が、すぐに目を離し、リューラを見た。


「‥‥‥‥リューラ」


「はぁ、はぁ、はぁ、」


荒い息を吐くリューラの前にリオウは立った。


並の人間なら魔力に飲み込まれてしまう。


そんな大きな魔力の渦が出来上がっているにも関わらず、リオウは平然としていた。


(リオウ様は、いったい、どうして‥‥‥?)


その疑問に問うように、リオウの顔を見る。


そして、驚いた。


ルシータは、リオウがリューラを冷たく見下ろしていると思っていた。


予想通り、リオウは無表情だ。


だけど、その目は愛しささえ感じると勘違いするほど優しかった。


「リューラ、落ち着け」


「っ!!」


リオウは落ち着いた声でそう言うと、リューラを優しく抱きしめた。


空気がまた動き出す。


危険を察知し、ルシータは思わず叫んだ。


「リオウ様!危ないですよ!」


そんな注意をしたが、リオウはルシータを鋭く睨んだ。


「黙れ。声を出すな。気配を消せ」


「え?」


リオウは手をルシータの方に向け、そのまま魔力を込める。


すると、ルシータは光のベールに包まれた。
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