Under the ROSE
何年もの時が過ぎる間、セリスはただ願っていた。
──翼が欲しい
この城からはばたいて、澄み渡る綺麗な青の中に混じり、忌まわしい過去を脱ぎ捨てて自由になるのだ。
もし、翼があったのなら。
今すぐにでもここから抜け出せるのに……。
しかしそんな夢のような事が現実に起きるはずもなく、ただ、毎日が過ぎてゆく。
そんな時、リュードはやってきたのだ。
綺麗な黒の瞳の中に宿る野心を見たセリスは、自由への鍵を手に入れたと思った。
妃殿下はリュードが皇族との繋がりが欲しいために、セリスに求婚してきたのだと思っている。
しかしそれは違う。
リュードが欲しているのは、玉座だ。
この国の、覇王となりたいのだ。
そんなことにも気付かない愚かな義母に、心の中で侮蔑の笑みを贈る。
──彼なら、私を護ってくれる
アルフォンス派の者達の手から。死に物狂いで護ってくれるだろう。大事な、大事な玉座への鍵なのだから。