溺愛伯爵さまが離してくれません!
番外編 エレンと子爵様
―――彼との出会いは運命的だった。

目が合った時に、身体全体が痺れるようなそんな感覚に陥った。

大した時間ではない。ほんの数秒。
けれど彼の瞳との交わりは、私の中である想いを生み、それはどんどんと膨らんでいく。

レガート・ウィリル・コーレル子爵。
この街の貿易の視察の為に訪れた途中で、私の屋台に寄ったのがそもそもの始まり。

さっぱりとした金色の短髪に、細長い一重の目。
決して美男子ではないけれど、とても優しそうな顔をしていた。

私から商品を受け取った時に、「ありがとう」と言って零れた笑顔がとても印象的で。
その日から私は彼を忘れる事が出来ずに、ずっと心の中で彼の事を想っていた。

でも、彼は貴族で、私はただの庶民。
決して結ばれる事はないと、密かに想うだけだった。

繋がりはその時だけのこと。
きっと自分の人生の中でその一瞬だけの繋がり。
淡い思い出として残るだけ、・・・そう思っていた。


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