溺愛伯爵さまが離してくれません!
(どうして、あんな顔をするのよ・・・)

あんなに悲しそうな表情の伯爵さまを見たのは初めてでした。

別に私の事なんて、ただの侍女としか思っていない癖に。
貴方はいつも他の女性と遊んで、私の事など眼中にもない筈。

吐いても楽にならない胸の部分を、ギュッと握りしめます。

惑わされてはいけない、あの顔に。
このまま伯爵さまを想っても、叶う事などないのだから。

涙が出そうになる瞳をきつく閉じて堪え、そしてしっかりと前を見据えると、一歩そこから歩き出したのでした。

その一歩は決意の、一歩。

私自身の新たな一歩である、と信じて。
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