溺愛伯爵さまが離してくれません!
「さ、リーナ行くわよ。少しは明るい顔をしなさい!」

母に背中を叩かれ、部屋を出るように促されます。
部屋を出ると、父が待っておりました。

見合いの場は、この町の人々が何かの催しの際に使う事の出来る集会場。
この日のために、父があらかじめ部屋を取っていたようです。

集会場へと着くと、集会場の管理者に部屋へと案内されます。
どうやらもう見合いの相手は先に着き、部屋で待っているようで、心なしか緊張してしまいます。


「―――待たせてしまって申し訳ない。初めまして、グレイス殿」

扉を開け、父がそう言いながら部屋へと入っていきました。
後を追うように私も部屋へと入ります。

「いえ、私達も着いたばかりで気になさらないで下さい。初めまして、リーナ嬢」

部屋にいたのは、男性が2人。
椅子から立ち上がりそう私に挨拶をしてきたのは、紛れもなく私の見合い相手。
優しそうな笑みを浮かべながら、私が向かいに座るのを待っていました。

伯爵さまよりも一回り大きなガッチリとした身体、さっぱりとした黒色の短髪。
とても笑顔の似合うお方で。
私より3つ上とは思えないくらい若く見えます。


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