溺愛伯爵さまが離してくれません!
しかし、リーナはどうしたのだろう。
本当にただ疲れているだけだったんだろうか。

見合いの話がある頃から、ずっと元気がなかったし。
何か不満や心配事があるなら言ってくれればいいんだ。
いつもひとりで考え込んで、気持ちを隠して。

リーナの本当の気持ちが分からないから、余計に焦ってしまう。

リーナは僕をどう思っている?
気持ちを確かめようにも、感情の読み取れない言葉で返されるだけで、余計に苦しくなる。

あの時だってそうだ。
どう反応するのか試してみたくなって、わざと体中に赤いあざを作って見せたけれど、私を哀れに思うような、そんな悲しそうな表情を浮かべて、「自分を大事にしなさい」と、それだけ・・・。

自分が恥ずかしくなったよ。
なにやってるんだろう、って。

リーナがそんなものに、感情を露わにして取り乱すような人ではないと分かっていたはずなのに。

「こんなに近くにいてくれるのに、気持ちが分からないなんてな」

「近くにいるからこそ、だろ?安心しきっているからだよ。自分の傍から離れないとそう思っていたから」

「そうか・・・」

くるくると回していたワインを勢いよく飲み干し、はぁ、と息を吐く。
アルコールが回って身体が一気に熱くなるのに、頭は冴えたまま。
今日はどれだけ飲んでもきっと酔うことはないだろう。


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