溺愛伯爵さまが離してくれません!
また部屋には僕だけになり、辺りがしん、と静まり返る。
ため息の音も響くくらいの静けさだ。

いつもならこの部屋にはリーナの姿があったはずなのに。
リーナの透き通った声が響いているはずなのに。

「リーナ・・・」

いなくなったリーナの面影を探し、そう名を呟く。

ああ、胸が痛い。
鋭い刃で切り刻まれたかのように、ずたずたに傷ついて息もするのがやっとなくらいに苦しい。

ごめん、リーナ。
僕の悪い所を必ず直すから。君の望むものは全て叶えてあげるから。

お願いだ、リーナ。
僕の元へ戻ってきて・・・。
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