溺愛伯爵さまが離してくれません!
そう、か。その場合もあるんだ。
ない訳じゃない。いやむしろそれは大いにあるかもしれない。

どこまで愚かなのか、僕は。
単に僕への気持ちがなく、好きでもない人と結婚するくらいなら、と出て行ってしまったのかもしれない。
なぜそれを考えなかったのだろう。

「・・・どうした?」

「い、いえ。何でも・・・」

「頼むぞ、カイル。リーナはこちらからお願いし、預かった大事な娘だ。もしリーナの身に何かあったら、たとえ庶民でも、私は長く付き合っているリーナの家族に、申し訳なくて合わせる顔がなくなる」

「分かっています。必ず」

それだけ言うと、部屋を出た。

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