強引でもいい、私を奪って。【SPシリーズ大西編】
それもそうか。データでなく、発信機がついているのならともかく。
「それにね、これは大事にしたほうがいい」
悠はネックレスが乗った私の手を、ぎゅっと包み込む。
その視線はなぜか、温かいものが込められているような気がした。
「悠、もしかして知ってるの? このデータが、どんなデータなのか」
聞いてみるけど、悠は微笑みで返すだけ。
「よし、そろそろ行こう。今夜の宿を探さなくちゃ!」
「ちょっと待ってよ。自分から大きな秘密を暴露したくせに、その不自然な話題転換はないんじゃない?」
そう言ううち、悠はほとんど車も走らない道路を、軽やかに走っていってしまう。
追いかける視線の先には、何艘もの漁船が停泊していた。