強引でもいい、私を奪って。【SPシリーズ大西編】


「すみませーん」


悠は持ち前の明るさと営業スマイルで、漁に使う網の手入れをしている漁師のおじいさんに近づく。

私はもし知っている人だといけないと思い、ずっとうつむいていた。


「俺たち、東京から駆け落ちしてきたんです」


そうして、何人もの心を感動させた純愛物語を、おじいさんに語りだす。


「愛し合っているんだけど、親に反対されて……」


その長い話の半分は嘘で、聞いていると恥ずかしくなってしまう。

最初は怪訝そうな顔をしていたおじいさんは、話を聞き終えてぶっきらぼうに言った。


「毎日漁を手伝ってくれるんなら、空き家を貸してやる」


よく聞くと、どうやら近所におじいさん世代と娘世代と別の家が建っていたらしいのだが、おじいさんの奥さんの体調が良くないため、今は娘夫婦の家をリフォームして同居しているという。

おじいさんたちが住んでいた家は、まだ買い手がついていないみたい。


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