強引でもいい、私を奪って。【SPシリーズ大西編】
「逃げろっ、逃げろ、霧子──!」
そんなこと言われたって。
このままあなたを見捨てて行けって言うの?
あなたがいなければ、結局私は、幸せになれない。
たとえ、世界の果てまで逃げおおせたとしても。
体から、力が抜けていく。
そんな私の肩を、後ろから誰かが叩いた。
「帰りましょう、霧子さん」
低くて優しい、そして残酷な高浜さんの声。
もう、逃げられない──。
騒ぎに気づいたのか、辺りが急に騒がしくなった。
パトカーのサイレンが近づいてきて、新城さんたちのすぐそばに停まる。
そこから降りてきたのは、公安の篠田さんだった。
「……連行しろ」
それだけ言うと、二人の先輩SPは黙ってうなずき、悠を無理やり立たせた。
「悠……!」
行ってしまう。
悠は背中を押され、パトカーに押し込まれる間、ずっとこちらを見ていた。
まるで、泣きそうな顔で。