強面勘違い年下男と見た目詐欺なアラフォー女
『ありがとうございますっ緒川さぁぁぁんっ』

後藤君や他の営業さんが外回りに出た瞬間、木田さんは私にしがみついて拝み倒してきた。

私は仏様でもお釈迦様じゃないよ。

『いいよー。木田さんも偉かったね、断らず書類受け取ろうとしたじゃん。えらいえらい』

『ふぇぇぇぇぇぇぇぇぇっこ、こわかったぁぁぁぁぁ』

肩をガックリとしょげる木田さん。

今日の事務は私と木田さんだけだ。

本来事務は3人だけどもう1人の事務はパートさんでシングルマザーの人見さん。

しかもお子さんはまだ幼稚園児ときたら、どうしても色々と不測の事態が起きてしまうらしい。

今日も朝イチのメールで

『子供が高熱を出して出勤できない』

というメールがあった。

入社面接時に事情を聞いていたので、そういう融通はウチの会社はユルユルだ。

人見さん自身ももっと働きたいらしいが、小さいお子さんはどうしても体調を崩しやすいらしく思うように出勤ができないと嘆いてらした。

人見さんは以前大手の、それこそドラマに出てくる大きなフロアの会社の営業職に就いていたそうで、どんな仕事もドンとこいな人だ。

営業職に就いていた事もあって、仕事の流れをよく見て書類を作成している。

だからというか私よりも年下なのに、な貫禄?姉御?的なモノが有ってついつい頼ってしまう人だ。

まあ、そんな人見さんですら後藤君にはビクついてしまうらしい。

何でもあの目つきの鋭さがダメだとの事。

そんな風に社内のみんなから恐れられて?いる後藤君だが、私はあまり恐いという印象を持っていない。

かと言って、『うわお!超好みのタイプ!!!』ていう事もない。
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