I love youを日本語に
「はい、じゃあ次の授業からは夏目漱石の“こころ”という話をやりたいと思います。」
授業も残りあと10分ほどだ。
「この話、知ってる人ー?」
先生はそう言ってクラス中を見渡すが反応はなし。
「じゃあ、夏目漱石っていう人を知ってる人!」
「吾輩は猫である書いた人ー」
「坊ちゃんもこの人だよねー」
「あ、あとお札になった人ー」
数人が声をあげる。
わたしはそれを頬杖をつきながらぼーっと眺めていた。
「さすがに夏目漱石は知ってるか。
そうね、この人はたくさんの本を書いて作家としても有名だけど、もともとは中学高校の先生だったの。
で、後に留学して大学の講師にもなった人なんだよ。」
へえ、夏目漱石ってそんな人なんだ。
そんなことをぼーっとしながらも思っていた。
「でね、英語を教えていた夏目漱石はある日、生徒にこんな問題を出したの。
“I love you”を訳してください、って。」