私のイジワルご主人様
あたしが自分から離れていくのを待つようなその言葉。
そんなことを言う理由がきっとあるはずなんだけど、いまだにあたしにはそれがわからない。
作業をするためにやや下向き加減になった横顔からはその真意が読み取れない。
視線に気づいたのか、まとめたプリントをトントンと揃えながら鴻上くんがこちらを向いた。
「ん?何じっと見てんの。早く手を動かして。まだあるんだから」
鴻上くんが視線で示した先にあるのは、まだまとめられていないプリント。
あたしがしなければいけない分がまだ積まれている。
ふと見れば、鴻上くんの分はもう終わっている。
『ご主人様を待たせるなんてダメなワンちゃんだな』
そんな声が聞こえてきそうで、あたしは慌てて作業にとりかかる。
その様子を鴻上くんは机に片肘をついて眺めていた。